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http://www.sankei.com/premium/…/151123/prm1511230004-n1.html

歩道沿いのごみを拾う高校生ら。「故郷をきれいにしたい」との思いから大勢の人が参加した=10月10日、福島県広野町(野田佑介撮影)

 「明らかな犯罪」「殺人行為」-。東京電力福島第1原発が立地する福島県沿岸部の国道6号で10月、地元の中高生らが参加した一斉清掃活動の主催団体に対し、約1千件にも上る誹謗(ひぼう)中傷の電話やメールなどが寄せられていたことが分かった。地元の高校生が道路沿いに捨てられたごみの多さに見かねて声を上げ、5年ぶりに行ったボランティア活動。必要以上に放射線被曝(ひばく)を恐れる人たちによる、子供たちの思いを踏みにじる中傷行為に地元の関係者は胸を痛めている。

「懐かしい」とほほ笑む中学生
「あったあった、ここにも」。10月10日、今は原発事故の収束拠点となっているサッカー施設「Jヴィレッジ」(広野町、楢葉町)にほど近い国道6号の歩道沿い。
マスクを着け軍手をはめた一団が草むらから火箸でごみを拾い上げ、ポリ袋に次々と入れた。ペットボトルに空き缶、菓子箱にビニールひも、さらには看板のようなものまで。

生い茂る雑草に隠れて見えづらいが、火箸で草をよけると次から次へと見つかった。開始から2時間余りで子供たちの袋はいっぱいになった。

震災前までJヴィレッジで活動していたサッカークラブに所属し、チームの仲間たちと参加した中学3年の男子生徒(15)=いわき市=は開口一番、「懐かしい」とほほ笑んだ。
原発事故以来、初めてJヴィレッジ近くまで来たといい「(施設の)環境がいい。ここで練習したい」と目を輝かせた。放射線量への不安はないかと尋ねると「自分の意思で来ました。気にはしません」と語った。

高校生が再開を持ちかける
「みんなでやっぺ!! きれいな6国(ろっこく)」と題した清掃活動は、平成19年から毎年秋に行われてきたが、東日本大震災と原発事故のため22年を最後に中断していた。

今年3月、国道6号であった桜の植樹イベントに参加した地元の高校生が、道路沿いに捨てられたごみが多かったことに心を痛め、「6国」の主催団体の1つ、NPO法人「ハッピーロードネット」の西本由美子理事長(62)に開催を持ちかけた。

高校生の思いに共感した西本理事長は「自分の考えを持って故郷のことを考えてくれている子供たちの思いを尊重したい」と活動再開へ奔走。その甲斐あって、国や県、沿線の自治体から後援を受けた。

ところが、活動の実施を告知した9月中旬ごろから、このNPOに誹謗中傷の電話やメール、ファクスが県内外から届き始める。

「若者を殺す行為」「美談にすり替えた子供への虐待」「狂気の沙汰だ」-。中には、主催団体の関係者に危害を加えることをほのめかしたものもあった。10月末までに、こうした誹謗中傷のメールなどは、1千件にも上った。

「子供の希望を踏みにじるな」
清掃当日。北は宮城県境の新地町から、南はいわき市まで全8区間計約50キロで、中高生約200人を含む総勢約1400人が参加した。避難区域となっている区間は大人が担当し、中高生はそれ以外の一般の居住地域となっている区間を受け持った。
「(国道6号が通る)この地区は自分たちのルーツ。地元のために何かしたいと思っていた」。大熊町出身の高校2年の男子生徒(17)は参加の理由をそう語った。

生徒は会津若松市などに避難し、現在はいわき市の新居で暮らしている。実際にごみを拾って歩いた広野町の様子を「小さいころから遊びに来ていた。景色は変わっていないけれど人が少なくなった」と寂しげ。それでも「こうして、ここに立てるようになったということは復興が進んでいるということだと思う。参加できてうれしい」と笑顔を見せた。

国道6号を通って学校や買い物に行っていたという高校2年の男子生徒(17)も思いは同じだ。浪江町で生まれ育ったが自宅には戻ることができず、いわき市で生活する。「浪江の家への行き方も忘れてきている。思い出の詰まった故郷の力になりたいと思ったのでよかった。まちがきれいになりやりがいを感じる」と話したが、「本当は浪江の近くにも行きたかった」と漏らした。

活動に参加したいわき市出身の会社員(36)=仙台市=は「地域のことを考えている若者がたくさんいることが分かった。被災地の希望だ」と話した。

西本理事長は「子供たちが安全に参加できるよう確認していた。除染で線量は下がっており、活動当日も計測したが被曝線量は日常生活の範囲内だった」と強調する。活動に参加した子供たちが誹謗中傷にショックを受けているといい、「賛否があるのは仕方ないと思うが、実際にこの地で生活している人がいる。故郷を思う子供たちの希望をなくすようなことはしてほしくない」と訴えた。(野田佑介)