福島県浜通りの再生~夢のまち (仮称)「双葉特区構想」の実現に向けて~ NPO法人ハッピーロードネットが現在進めている双葉郡の再生に向けての提言書です!是非ご覧ください!
  1、 緒言    東日本大震災の発災より3年の歳月が流れました。福島県浜通りの原発周辺地域である双葉郡の住民は、今尚避難生活を余儀なくされ、将来の生活の見通しが見いだせない状態にあり、ふるさとへの帰還は時間の経過と共に厳しさを増すばかりです。   現在、町村ごとの復興計画は進んでいるようですが、本当に町村単位での真の再生は可能なのでしょうか。現状を分析すればはなはだ疑問であります。 そんな中、いち早く緊急時非難準備区域が解除となった広野町では、5,500名の町民の内、現実的に町に戻ったのは2割程度。300名以上の児童がいた小学校も、現在は90名程度が通い、その殆どはいわき市内からの通学と聞き及んでおります。   病院も週に…4度の診察。勿論、その他の歯科・耳鼻科を始めとする専門医はいわき市に頼らざるを得なく新聞も届かず、現在コンビニエンスストアが2軒ある以外は、通常のインフラが殆ど行き届いていない状態です。 まちの再生と言うものは、産業そして雇用があり、親そして子供たちが安心して学び、暮らせるという事が前提ではないでしょうか。各種アンケート調査や現場を分析すれば、この地に戻りたい方の殆どは高齢者で、これから5~10年後のまちの再生に希望を見出すことは困難と言わざるをえません。 そしてこの現実は、これから双葉八町村全てに例外なく当てはまる事が予想され、今後双葉郡全体の未来ビジョンが見えてこない限り双葉郡の復興は現実的では無いと考えます。   震災から時間が経過し、現場を認識していながらも国や行政が方向性を示せない今、地元住民の我々が立ち上がらなければ、確実に双葉郡は崩壊の一途を辿る事になると考えます。そんな中、様々なご縁を頂き、広島市そしてチェルノブイリ原発事故後のウクライナの視察を終え、色々な可能性を模索しながら、双葉八町村の将来的な合併を始めとする、夢の町(仮称)「双葉特区構想」の実現に向け我々は動き出します。全ては取り戻さなければならない「ふるさと」そして、未来の子供たちのために・・・1238915_433602400081960_211780135_n 1236270_433602493415284_1461080366_n 06 04 03 05
2、福島再生:子供たちのために(ウクライナに学ぶ福島の復興)(別紙01)
  3、 双葉郡の現状について
震災後、第一原発を抱える双葉郡はすっかり変わり果て、人の姿も消えています。しかし各町村により抱える課題は異なり、そのうえ同じ「まち」の中でも通りを挟んだだけで事情が異なる状況が生まれています。これは非常に不幸なことであり、いま究極の危機に直面しているにもかかわらず、一致してその困難に立ち向かうことを阻んでいます。   双葉郡各町村全てに共通しているのは、それぞれが単独でこの困難に立ち向かうことは不可能だということです。もし町村単位での建て直しが机上の論理で可能になったとしても、それまでにかかる時間を勘案すれば、そこに住民の姿は無いでしょう。放射線量は時間が経てば減少するかもしれませんが、まちの未来は益々遠のくことになります。   現在各町村において復興計画などを作成しておりますが、内容は多分に危うい観測が含まれていないでしょうか。それにも増して、各町村が立脚する双葉郡全体のイメージを協議しないままの現状です。双葉郡全体としての将来像があってこその、各町村・地域の細かな計画になるべきではないでしょうか。 そして今後、人の一生あるいは子、孫の世代というライフサイクルのみならず、人々の意識の変化も考えれば、「時間軸」が最重要なカギになることは自明の理です。30年後あるいは50年後の不確実な未来だけで、人は生きていくことはできませんし、まちが再生することもありません。   個別の事情に拘泥し、判断と行動の契機を逃せば、現実的かつ前向きな双葉復興を目指すという選択肢は消え、結果として我々のふるさとである双葉を失うことになるのではないでしょうか。
  4、 双葉郡が目指すべき「まち」とは
緒言で触れた広野町の現状が全ての「まち」に当てはまることが、厳しい現実としてのしかかる今、ただ単にまちを合併しても、本当の解決、本当の復興には至らないと考えます。   元々過疎地域で、原子力発電所の存在によって維持されてきた歴史を顧みれば、それが無くなった其々のまちが単独で、バラバラに復興を進める青写真は平時でも非常に困難です。まして瀕死の状態の双葉郡が再生するには、双葉郡が一体化するのみならず、あらゆる力を結集しなければなりません。それにはいくつもの困難があることは間違いありませんが、そこに参加する住民が共有できるだけでなく、政府をはじめとするステークホルダーに説得力をもつビジョンを持つことが不可欠です。 スラブチッチ市の例にもあるように、国家プロジェクトとして将来の「まち」としての発展を見定め、産業・雇用の創出、専門技術を身につける一貫教育への取り組み、そして病院建設を始めとする医療の充実、ここに住みたいと思えるような子供を育てる環境作りが不可欠です。   考えても見てください、子供がいないまちに発展など有り得ないのです。そして現在は双葉郡に親子で生活すること自体が困難です。スラブチッチ市で見たような子ども達の笑顔を双葉郡でも実現したいと強く思います。 そして元々の住民は勿論、外からも住んでみたいと思わせる安心・安全な環境、便利な都市・生活インフラの整備、そして絶対的な優遇制度が無ければ、甚大な被害を受けたまちに住む必然性を見出すことは困難です。そこに焦点を当てることがまちの発展への鍵となります。
  我々が目指す「双葉特区」に必要なものとは、
  (1)医療費の無料化と国際的な研究の拠点   (双葉郡を支える総合病院の建設・国際的な低線量被曝の研究・データの収集・健康手帳での管理)
  (2)少子化対策   (保育所・幼稚園・小中学校の建設・学費の無料化・優遇制度など徹底した子供の子育て環境)
  (3)一貫教育システムの構築   (原子力産業などに特化した専門的な一貫教育の学校の整備と優遇制度)
  (4)産業の創造と雇用の創出   中間処理施設や原発の廃炉事業を始めとする、新たな産業の創出とそれによる雇用の創出。その他の企業誘致など。
  (5)税制の優遇   (企業誘致に係わる優遇制度:生活を行ううえでの個人の税制の優遇)
  大きく分ければこの5つが柱となるでしょう。無論これらを実現するためには、国家プロジェクトとして様々な英知と資金を投入する必要があります。ただし、地域区分の現状、予想される人口規模、想定できる産業、国の財政等々、様々な条件を考慮すれば、双葉郡の集約は必然です。それによって、双葉は現在の戻りたくないまち・戻りづらいまちのイメージを払拭し、住んでみたいまちへの転換を図ることができると考えます。
  (写真は:ウクライナ 子供の笑顔が絶えないスラブチッチ市の様子)
  6、「双葉特区」の理想的な姿について
一般的に考えれば、帰還困難区域以外のエリアに於いて、低線量地域で、ある程度の面積を有する場所を選定し、双葉八町村約8万人の帰還希望及び新しく住まう20~30%が住む事を仮定、1カ所及び2カ所に集約した拠点をつくり、病院や学校そして新たな産業などが成り立つ双葉郡の中心の「まち」として約2万人規模のニュータウンの建設を行う事が合理的です。例を挙げれば、20年以上前に建設されたつくば市や、東京都の品川区大崎駅前の都市開発のような、凝縮された「まち」の形成です。 さらに、現実に検討が進んでいる中高一貫校などの教育施設や医療施設、廃炉に関わる拠点施設などの整備予定状況などを勘案すれば、双葉郡の低線量地域が有力な整備場所と考えられます。 しかし、住民の感情は複雑です。帰還希望者の話を聞けば、あくまで元々住んでいたまちに帰りたいというものが願いであり、それ以外の選択肢を持っていないというのが現実です。特に高齢者に同じような意見が聞かれます。 そこで我々は、拠点整備とそれぞれのまちを繋ぐ、制度的オプションをもって「まちづくり」に着手する必要性があります。
  (例1)「まち」の機能を一カ所に凝縮した都市づくり    1箇所に新たな双葉八町村の都市(拠点)を設け、その街を中心と「まちづくり」を形成していく。学校や病院そして産業などを一カ所に集中的に整備す   る。
  (例2)第1原子力発電所を挟み、北と南の2箇所を拠点とし、相互効果を生み出すまちづくり。北と南にそれぞれ特化したインフラ機能を設け(病院や産業など)お互いのまちを行き来しながら、支え合い発展していける機能を設ける。   更には新たなバイパス(生活道路)を設け、それぞれのインフラ機能を住み分 けながら共存共栄していけるまちづくり。大きく分ければこの2本の方向性と言えるでしょう。
  7、 結言
  我々には時間がもうありません。薄れゆく「ふるさと」を取り戻すべく、そして新たな子供たちの笑顔溢れる未来の双葉郡の創造へ向けて、我々この地域の大人が責任をもってその背中を見せてあげる時です。現実のハードルは高いですが、町村間の垣根を超え、実現可能なあるべき未来を見据えながら、今この大事な時期を乗り越えなければなりません。そして双葉郡の復興無くして福島県を始め日本の本当の復興はありません。   今回、ウクライナの視察を始め、大変多くの皆様方に支えられ、多くのことを学び、その再生への可能性を感じて参りました。町村の垣根を取り払い、将来的な双葉郡の合併も視野に入れながら、(仮称)「双葉特区構想」実現の為、それぞれの「まち」が同じステージに上がり、最善の議論を交わしながら、国へ町村が連携し再生へ向けた最善の提案を行っていくことが、この双葉郡の未来、ひいては福島県浜通り復興へ確実に繋がって行く事を確信致しております。   6年後の東京オリンピックの際には、桜が咲き乱れるこの「ふくしま浜街道」を聖火ランナーが通過し、復興を遂げた新たな双葉郡には子供たちの笑顔が溢れている事を切望し、構想実現に向け、国・県・町村・関係各位の皆様のおご協力頂きたくお願い申し上げます。